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シリーズ企画 第11回
絵画を考える ―水を描く―
9月5日(土)~9月20日(日)

開廊日時| 水 - 日   12:00 - 19:00 (日曜18時まで 展示最終日17時まで)

休廊 | 月・火 


一条美由紀  大渕花波  鈴木敦子  中西寿美江 中村索  野津晋也  和田みつひと

※オープニングは開催いたしません。
新型コロナ感染拡大状況に応じて開催日時や営業方法が変更となる場合もございます。
ご来廊時にはマスク着用の上、手指消毒をお願いいたします。
最新情報はwebsite、または、email宛てにお問い合わせ下さい。



 このたび、工房 親(東京・恵比寿)にて、シリーズ企画第11回「絵画を考える」を9月5日(土)から9月20日(日)まで開催いたします。本企画展は、毎年異なるテーマを設定。今年のテーマ「水を描く」。本テーマに対して7人の作家が新作を発表します。2020年は工房親、設立30周年の節目の年でもあります。1990年の設立から現代を生きる作家のアートを工房親から発信し、今後とも独自の企画展を開催していきます。

***********

工房親のシリーズ企画「絵画を考える」展は、今年11回目を迎える。今までも、絵画の多用な面を考え、その表現や平面を多角的に捉えたいと考えて企画して来ている。今年のテーマは「水を描く」。


水を描くということで、水そのものを捉えて表現する人や抽象的に表現したり、全く違う観点からアプローチする作家もいると思う。そういったことから、絵画を考える展は、決して絵画作品や平面作品のみの展示に収まらない。


レオナルド  ダビンチは、マルチな才能の持ち主だったが、やはりなんと言っても、画家としての存在が、彼を天才と、させていると私は思う。その彼のすべての発想の源として、水を観察し続けた、と言われている。


自然界の水は、人間にとって不可欠であることは、いうまでも無い。また、私達の体の大部分は水分であることも周知だ。そんな誰にとっても、身近で貴重な「水」を7名の作家がどう取り組んで制作したかを、是非ご高覧ください。


コロナ禍ではありますが、工房 親は換気や消毒、3蜜に注意してお待ちしています。マスク着用の上、ご来廊時に手指消毒をお願いいたします。尚、オープニングやイベントの開催はございません。


工房親 主宰 馬場隆子



<参加作家> 

一条美由紀、大渕花波、鈴木敦子、中西寿美江、中村索、野津晋也、和田みつひと (50音順)

今回の展示作品、インタビュー内容、略歴は下記をご覧ください。

一条美由紀 ICHIJO Miyuki



シリーズ作品「千年生きし、還る海」 
「千年生きし、還る海 1~5」   33.3×33.3cm、24×33.3cm、18.2×18.2  キャンバス 油彩 2020
「千年生きし、還る海 6・7」  45.0×90.0cm ペンキ、PET樹脂版 2020

■本展覧会テーマ「水を描く」に対するコメント(5月頃)

 水は、全ての地球上の生命の源。

 水に身を置くことは、母に身を委ねること。

 そして自身の解放と未来のための細胞分裂を促す。

 水を描くことは自身の心を放ち、明日を問うことだ。


<インタビュー>(8月頃)
●シリーズ作品コメント「千年生きし、還る海」
 私たちは海から生まれ、身体の中にはその名残がある。全ての生命が命を繋いで消え、また生まれる。
 人は生きることに意味を求めるが、ただ存在の循環があるだけなのだ。

●「水を描く」というテーマで展覧会へのお誘いをいたしましたが、初めに何を想いましたか? 

 自分の体の中に流れる水を思い浮かべました。

●本テーマで取り組んだ新作について、どのように取り組まれましたか?

 水とは何か、水と自分の関係は何かを考え、最終的に海からきた自分をイメージしていきました。

●展示作品についてお聞かせください。また、新たに試みたことや特にこだわった部分があればお聞かせください。

 今回海をイメージしていたら、自分が海を泳いでいるかのように感じていました。
 自分の周りを海水が取り囲む、そんな空想をしていたら、抽象的なイメージが湧いてきたので、
 いつもより抽象的な作品になっているかもしれないと思っています。

●あなたにとって「絵画」とは何でしょうか。

 「絵画」とは、一番身近に自分を表現できる手段だと思ってます。
 でもそれは簡単ではなく、毎回自分を深く探っていく作業でもあります。
 描いてない期間が17年と長かったので、その間うつ病ではないかと思った時期もあり、絵画は、自分にとってセラピーになっているかもしれません。
 自分を探り、絵画としてして表面化した作品をみて、さらに意識しなかった自分を知る道具でもあります。
 そしてその作品を発表することによって、絵画を通じて他人とのコミュニケーションになっています。
 願わくは、自分の作品が見る人の心の奥に入り込み、その人にとって心のなかの会話となっていただければと思います。

●コロナ禍ではございますが、今後の活動の目標や挑戦したいこと、制作の姿勢などをお聞かせください。

 コロナが今までの人類の生活を少し変化させたかと思います。でもそういう社会の中で時代を感じつつ、社会に関わり生活する一個人として、その日できることを淡々とやっていくだけです。



略歴

福島県生まれ

1994~2001    デュッセルドルフ美術アカデミー在学 ドイツ(1997年 アカデミー旅行奨学金)


主な展覧会

2020 「Take me to your home」 ART TRACE GALLERY (東京)

    エスプラナード展2020、どこかでお会いしましたね 2020(さいたま国際芸術祭2020)埼玉会館 (埼玉)

   「ONVO STUDIO EXHIBITION Vol.1」 ONVO STUDIO伊奈町 (埼玉)

2019 個展「The bigger the lie, the more they believe.」Gallery 美の舎 (東京)

   都美セレクショングループ展  東京都美術館 (東京)

   「さまざまな形、さまざまな色」 工房 親 (東京)

2018 個展「Interact with yourself-自己との会話- 」 学習院女子大学 文化交流ギャラリー (東京)

   「どこかでお会いしましたね」展  (埼玉) 2018年以降参加

   3331 ART FAIR  アーツ千代田 、連動展「布置を描く」ART TRACE GALLERY (東京)

2017 「本当のことは言わない」 HAGISO (東京)


その他、日本とドイツでの個展、グループ展。Art Düsseldorf等に出品


大渕花波 OHBUCHI Kanami



(左)おばけのケイオス     木片に額縁、アクリル 2020 

(右)おばけのプラクティス#20 額縁・綿布にアクリル、ハトメ、釘、アクリル  60×10×52cm 2020  

●作品コメント
「おばけのプラクティス#20」
額縁と絵画を反転させたシリーズです。装飾されるための額縁と、額縁を装飾するための絵画を制作しています。シリーズでもっとも細密に原作となる絵画を再現しました。

「おばけのケイオス」
額縁・絵の具・タブローを記号化し、ひとつの立体作品としてまとめたシリーズです。


■本展覧会テーマ「水を描く」に対するコメント(5月頃)

 この度は「水」を描くということで、今まで制作してきました、額縁と絵の反転させるコンセプトを保ちつつ、「水」にまつわる名画と「水」を連想させる額縁を作品に取り入れました。

 額縁としての絵画となった「絵」の中の「水」は、絵画の役割をしている時よりも、より流動的に見えるのではないか?と考えています。固定された「絵画」と「額縁」の役割・関係について、新たな視点で作品を見ていただけると嬉しいです。


<インタビュー>(8月頃)
●「水を描く」というテーマで展覧会へのお誘いをいたしましたが、初めに何を想いましたか? 

 はじめに、私の好きな作品であるジョン・エヴァレット・ミレー作「オフィーリア」を思い浮かべました。以前から描きたい題材であったのと、ちょうど「オフィーリア」の絵画を「額装」したいと思える額縁に出会ったからです。

●本テーマで取り組んだ新作について、どのように取り組まれましたか?

 この新型ウイルス流行禍のなかで大学院生という立場の私は、題材であるハムレットの登場人物オフィー
リアのように、鬱屈としたどこかへ気持ちをとばして、もはや現実と非現実の境にいてしまいたくなるよ
うな気持ちに苛まれました。その中で、絵画を描くという行為によって現実に引き止められていたと完成した今だからこそ言えます。
水に浮かぶように現実と非現実を境を彷徨う感覚は、新型ウイルス流行禍において奇しくも時世にぴったり当てはまるテーマであった、と感じています。

●展示作品についてお聞かせください。また、新たに試みたことや特にこだわった部分があればお聞かせください。

 「オフィーリア」を額装に使うにあたって、額縁の大きさに合わせ絵画自体の縮尺を変化させ、トリミングした点にこだわりました。また、「おばけのケイオス」ではより記号化を強調するために、シンプルな色面構成を心がけました。

●あなたにとって「絵画」とは何でしょうか。

 絵画とは、つねに古いものと新しいものが混在する、つまらなくて面白くすることが面白いものであると思います。だからこそ新たな表現に挑戦し続けたいです

●コロナ禍ではございますが、今後の活動の目標や挑戦したいこと、制作の姿勢などをお聞かせください。

 この新型ウイルス流行のなかで、絵画を含む芸術分野がどのようなものになっていくのかは未知数です。また、この時代を経た作品たちがどのような姿になっていくのか、楽しみにするには時期尚早であるとも感じています。まずは日々を健康に生き、一歩一歩目の前を歩んでいくこと、そして手を休めないことを大切にし、着実に前に進んでいきたいと思っています。


略歴

1996 東京に生まれる


2019 多摩美術大学絵画専攻油画学科 卒業

2019 多摩美術大学大学院博士前期課程美術研究科絵画専攻油画研究領域 入学

2020 同大学院 在学中


受賞歴

2019 平成32年度卒業制作優秀賞 受賞


主な展覧会

2020 『春韻展』工房親  (東京)

2020 『Square double』フリュウギャラリー  (東京)

2019 『Guest house』裏参道ガーデン  (東京)

2018 『モノクロマティカ』フリュウギャラリー  (東京)

2018 『桃と花/余白を読む』工房親  (東京)




鈴木敦子  SUZUKI Atsuko



鈴木敦子「一雨」 ミクストメディア、油彩、アクリル絵の具、水性アルキド樹脂、墨、色鉛筆、ジェッソ、麻布、パネル 2020 

●作品コメント
 激しく降る雨の日に水たまりに落ちる雨の水滴の形に目を奪われました。次から次へと雨粒の正円の形が重なり合って消えていく光景が鮮明に映りました。この雨を描きたいと思いました。

●本展覧会テーマ「水を描く」に対するコメント(5月頃)

 水たまりに落ちる雨を描きます。雨の水滴が水たまりに落ちて波紋として形を変化させ、そして、消えていく形の過程の中に、法則があるのか無いのか疑問を持ちました。雨の形が次から次へと変化して重なり合いながらリズムを作り、そこに、調和とバランスを感じました。


<インタビュー>(8月頃)
●「水を描く」というテーマで展覧会へのお誘いをいたしましたが、初めに何を想いましたか? 

 学生の頃から「水」を描いてきたので、一つの区切りとなるような作品にできたらと思いました。

●本テーマで取り組んだ新作について、どのように取り組まれましたか?

 雨をどのように平面に落とし込んでいくのか、手を動かしながら描いては離れて画面を眺め、描いては離れて眺めてと繰り返して制作の工程を一つ一つ確かめながら、作品の声を聴くようにして取り組みました。

●展示作品についてお聞かせください。また、新たに試みたことや特にこだわった部分があればお聞かせください。

始めに見た雨の水滴が変化する光景と降り続く時間を内包させるための画材選びや描く線と色と大きさ、制作過程で変化する画面上の調和とバランスを一つ一つ確認しながら制作を進めました。

●あなたにとって「絵画」とは何でしょうか。

「絵画」は私にとって表現手段の場です。描くことで純粋になることができるように感じています。また、「絵画」を通して外との関わりを持つことができる場です。

●コロナ禍ではございますが、今後の活動の目標や挑戦したいこと、制作の姿勢などをお聞かせください。

新しいことを見つけて挑戦し続けたいです。いつも新鮮な感覚を持ち続け、嘘のないものを正直に作り、今できる最大限のことをお見せできるように励みたいと思います。


略歴

1981 東京都生まれ

2004 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業

2013 第28回ホルベイン・スカラシップ奨学生


個展

2016 「中庭」Gallery Pepin(埼玉)

2015 iGallery DC(山梨)(’19)

2013 「つなげる」OFFICE IIDA(東京) (’18)

2010 「描く・ぬう」A-things(東京)

2006 藍画廊(東京)(’07, ’08, ’10, ’12, ’14, ’20)


主なグループ展

2019 「FACETS」ART TRACE GALLERY (東京)

2017 「春韻」工房 親(東京)(’18, ’19)

   「LOOP」東京都済生会向島病院 (東京)

2014 「ART OSAKA 2014」ホテル グランヴィア大阪 工房 親 (大阪)

2013 「VOCA展2013 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」上野の森美術館 (東京)

   「NEW CITY ART FAIR」阪急うめだ本店 阪急うめだギャラリー 工房 親 (大阪)

2011 「Art in an Office―印象派・近代日本画から現代絵画まで」豊田市美術館 (愛知)

2010 「時の遊園地」名古屋ボストン美術館 (愛知)

   「絵画のサイズ・絵画のイメージ」工房 親(東京)

   (’11「絵画を考える―支持体」, ’12「描くモノ」, ’13「色彩」, ’15「自然」, ’18「時を描く」, ’19

   「音を描く」)

2009 「2009 ASIAN STUDENTS YOUNG ARTISTS ART FESTIVAL」Defense Security Command Old building   gallery

    21yo-j (韓国)

2008 「ASIA TOP GALLERY HOTEL ART FAIR 2008」ホテル ニューオータニ 藍画廊(東京)




中西寿美江 NAKANISHI Sumie



(右)「Sea 0/0/0 #1」(2020)漆、土、木 h515 w728 d25
(左)「Sea 0/0/0 #2」(2020)漆、土、木 h400 w500 d25
(中)「Sea 0/0/0 #3」(2020)漆、土、木 h300 w400 d250


●シリーズ作品「Sea 0/0/0」コメント

 誰もが、絶対なる大きなものに包まれていた記憶は、気がつけば日常の中に忘却されてしまう。けれど、海ができた時の光景は、わたし達の記憶をそこに帰してくれるだろう。


■本展覧会テーマ「水を描く」に対するコメント(5月頃)

 わたしの体はほぼ水でできているけれど、水にとけてゆくことができない。少しの、それ以外の物質がとけゆくことをとどめている。その物質を限りなく水に近づけてゆくためにするような、すべての境界線を取りのぞく作業が作品を作ることだと思っている。あまりに自由なテーマに、どんな作品に仕上がるか、わたし自身も楽しみです。


<インタビュー>(8月頃)
●「水を描く」というテーマで展覧会へのお誘いをいたしましたが、初めに何を想いましたか? 

 なんて自由なテーマなの!何でもありじゃない?っと思いました。

●本テーマで取り組んだ新作について、どのように取り組まれましたか?

 作品を制作する際はいつもそうなのですが、まずテーマを頭の片隅に置いておくと、ある時、画像で浮んできます。その意味を考えて、それに近づける様に制作する感じです。

●展示作品についてお聞かせください。また、新たに試みたことや特にこだわった部分があればお聞かせください。

 漆で描く場合は、その日の温度や湿度、漆と土を調合してからの経過時間によって色味が変わっていきます。また、塗布した漆の厚みでも色味は変わります。

なので、天気予報を気にしながら、気にいった色味になるまで何枚も描いて、偶然を待つことが少しのこだわりです。

●あなたにとって「絵画」とは何でしょうか。

 絵画というと、どうしても歴史の中にある絵画としてカテゴライズされた作品を浮かべてしまいます。わたし自身は絵画にこだわった制作活動をしていないので、絵画について考えてぬかれた結論ではないのですが、わたしにとっては、それぞれの人がこれは絵画だという判断をすればそれで良いのではと思っています。なので人それぞれ、それを絵画と思った時に、それはその人にとって絵画になるのだろうと思います。

●コロナ禍ではございますが、今後の活動の目標や挑戦したいこと、制作の姿勢などをお聞かせください。

 今年はインドには行けそうにないのですが、ヨガ好きがこうじて何度かインドに行かせてもらっています。昨年インドに行った際に、インドの歴史を語る上で欠かす事のできないガンジーの博物館に行きました。身のまわりの家財や備品など、生き方すべてにかれの思想がこめられている部屋の壁に、この言葉がありました『My life is my Message』。その時、わたしはそんな生き方がしたいのだと気づかされました。現時点ではあまりに遠い生活ですが、ひとつの指標になっています。そして、もうひとつ心に残った言葉があります。『simplicity is the essence of universality』(シンプルさは普遍性の本質です)この言葉はわたしの制作に対しての姿勢と重なります。


略歴

1997年 東京芸術大学大学院漆芸科専攻修士課程修了

1995年 東京芸術大学美術学部工芸科卒業


2020年 かえりやま展       (東京)

2018年 絵画を考える 工房親  (東京)

2017年 CONTRAST  Japan’s Potential  工房親  (東京)

2016年 それぞれのカタチ 工房親   (東京)

2015年  December Tune それぞれのカタチ 工房親    (東京)

2014年  春韻展 工房親    (東京)

        30voices,30vuariations 工房親    (東京)

2012年  CORRESPONDENCE/LANDSCAPE 工房親   (東京)

2010年 Featuring  Blue Bird   EXIT11 Contemporary art  (Belgium)

2009年 Blue Bird   ギャラリー山口   個展    (東京)

2007年 pale blue dot  工房親   個展    (東京)

        Joyeux Noel 工房親     (東京)

        第3回アート・ジャム 'ギフト' 展  ギャラリー山口    (東京)

2005年  ギャラリー山口   個展    (東京)

2003年  ギャラリー山口   個展    (東京)

2001年   SPICA art   個展    (東京)


賞歴

2008年 鹿島彫刻コンクール 模型賞受賞

1993年 藤野賞受賞




中村索 NAKAMURA Saku



「水の中の雲」(2020) キャンバスにアクリル絵の具 117×80×2.5cm
「アムステルダム 1~4」(2020) キャンバスにアクリル絵の具 (1)22×7.5×2cm  (2) 33.5×24.5×2cm  (3)(4) 53×33×2cm 


●作品コメント

「水の中の雲」
北極圏の分厚い氷の下の海中に暮らす生き物たちは、当然のように口数が少なくなる傾向があります。大昔から、現在に至るまで、ずっとです。

「アムステルダム 1~4」
一番好きな街はと問われたら、(トレドは別格として)圧倒的にアムステルダムだな、と思いました。30年前です。それ以来一度も訪れていません。もうパスポートさえ、どこかへいってしまいました。


■本展覧会テーマ「水を描く」に対するコメント(5月頃)

 絵や写真のモチーフとしての水の、多様な魅力と無限の可能性については、今更何か付け加えるような言葉も私にはありません。

 ただ、空に浮かぶ雲の形さえ水の姿なのだということを思うと、水のイメージから完全に逃がれて何かを描くことなど出来ないのではないかと、絵筆を容器の水に浸しつつ考えるのです。



<インタビュー>(8月頃)
●「水を描く」というテーマで展覧会へのお誘いをいたしましたが、初めに何を想いましたか? 

 多様な視覚的イメージを強く喚起する、可能性に富んだテーマだと思いました。

●本テーマで取り組んだ新作について、どのように取り組まれましたか?

 実際の水を観察することはせずに、自分の中のイメージをもとにして制作を進めました。念頭にあったのは、雲、氷、湖、深海、運河、などです。

●展示作品についてお聞かせください。また、新たに試みたことや特にこだわった部分があればお聞かせください。

 同じ一つの根っこから、別々の方向に枝分かれして育ったように、トーンの違う2種類の絵になりました。氷と、水蒸気ほどには違わないと思います。

●あなたにとって「絵画」とは何でしょうか。

 例えば、歌や、詩やダンスのような、とてもべーシックな表現形式のひとつだと思います。

●コロナ禍ではございますが、今後の活動の目標や挑戦したいこと、制作の姿勢などをお聞かせください。

 コロナも心配ですが、加齢のため、腰、膝、肘など関節周りがすぐに不調になります。なるべく長く、大事に使っていきたいです。絵を描くことは、ダンスの一種だと思っているので。


略歴

1970  神奈川県出身

1993  東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業


個展

2017  仏蘭西厨房「かえりやま」(企画:工房 親)

1999  工房 親  (東京) (2000,2001,2006)


グループ展

2019  「絵画を考える - 音を描く - 」

2018  「絵画を考える - 時を描く - 」

2017  「絵画を考える - KO・DA・WA・RI - 」

2016  「絵画を考える - 作家のフィールド - 」

2015  「絵画を考える - 自然 - 」

2010  「絵画を考える - 10人の視覚提言 - 」




野津晋也 NOTSU Shinya



「連想・景1.」「連想・景2. 」(2020) 紙、インク、ガッシュ、水彩、パステル、鉛筆 59.5ⅹ46.5cm
「別の謎」(2020) 紙、インク、ガッシュ、水彩、パステル、鉛筆 25.7 x18.9cm



●作品コメント

「連想・景1. 」「連想・景2. 」
 窓ガラスにびっしりとはりついた水滴。しばらくすると、その重さに耐えきれず次から次へと下方へ流れだす。水滴のなくなったところから垣間見られる向こうの眺め。その景色と手前の景色との対話、或いは不意の一撃。

「別の謎」
こちらとあちらの境界に横たわる水域。流れおちる先は彼方の幻想か?



■本展覧会テーマ「水を描く」に対するコメント(5月頃)

 繰り返し夢にみる「水」についての光景がある。

 

 生家の前には、裏手にある溜め池から灌漑用の水を引き込んだ幅と深さ約50センチほどの溝がある。普段、溜め池からの排水量はわずかなものだったが、一旦大雨になると、池から溢れ出た大量の水は濁流となって溝へ流れこみ、みるまに水かさは増す。そしてしまいには、家の前の道路へ溢れ出るのだ。

 

 その溢れ出た水の中には、水草や小枝に混じって、鮒や鯉、食用蛙、そしてあまり目にしたことのないライギョなどが道路へ打ち上げられ、バタバタと跳ね回る。

私は密かにこれが楽しみだった。

 

 ある豪雨の時、見慣れぬ魚が路面へ打ち上げられた。どうにか捕まえようと急いで手をのばす。けれども、それはスルリと逃れ、勢い余った私は、足元の小枝に蹴つまずく。

 

 「あっ!」

 

と短い叫びをあげるやいなや、一瞬のうちに濁流の中へ転げ落ちてしまうのだった…。

 

 困ったことに、いつもここで目が覚めるのだ。


<インタビュー>(8月頃)
●「水を描く」というテーマで展覧会へのお誘いをいたしましたが、初めに何を想いましたか? 

 水辺のそばで育ったせいか、これまでの作品にもたびたび「水」にまつわる要素が現れてきました。「水を描く」ということと私のあいだには、因縁めいた親和性があるように思います。

●本テーマで取り組んだ新作について、どのように取り組まれましたか?

 「水」についての私の印象は、流れる、溢れる、不定形な、そして濁流のように不透明で渦巻くものなどです。どちらかと言うと、水の負の側面に特化しています。

このような水に関する私的な要素と複数の風景や像を画面の中に併置することで、そこに新たな知的解釈が促されるのではないかと考えております。

●展示作品についてお聞かせください。また、新たに試みたことや特にこだわった部分があればお聞かせください。

 さまざまな描画材料による「黒」の色味や質感の違いに興味をもっております。画面の中でそれぞれの「黒」が引き起こすある役割。それが「水」を暗示するのかどうか、その行方を探しております。

●あなたにとって「絵画」とは何でしょうか。

 恐らく、私の中には一つの「欠落」があります。長方形のチーズ片を少しだけ齧ってできたようなわずかな欠落です。自己免疫によるものかどうかはわかりませんが、その欠落をどうにかして元のかたちへ取り戻そうとしています。日々、その欠落したところへさまざま事柄が引っかかってくるのですが、欠落部の形状はいびつで、なかなかピッタリとは整合しません。だからこそ、それを取り除き、新たにその鋳型に合致する事柄を探しだすはめになるのです。しかも困ったことに、その引っかかった事柄は"ある種の偏り"が無視できないときています。

 ただここで考慮すべきは、取り除き、次第に内部へ堆積してくる"ある種の偏り"をどう処置するのか、ということです。堆積し偏った事柄の渦に飲み込まれそうになりながらも、ある日藁をも掴む想いで、目の前の紙へ筆をおろし、それを可視化してみようと思いいたったのです。

 私が排除しようとした"ある種の偏り"。実は、それこそがすべての「発端」だったのかもしれません。

●コロナ禍ではございますが、今後の活動の目標や挑戦したいこと、制作の姿勢などをお聞かせください。

 11月下旬に個展を予定しております。ひとまず現状はそこへ向け、引き続きの制作となります。コロナ禍への"魔除け"としての礎となりますように。


略歴

1969 島根県松江市生まれ

1992 鳥取大学農学部農林総合科学科卒業

2000 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業

2002 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了

 

2019 個展「指の銀行」 アートギャラリー環  (東京)

   「絵画を考える  ―音を描く―」 工房親  (東京)

2018 個展「ふくら芽」 アートギャラリー環  (東京)

2016 「絵画を考える  ―作家のフィールド―」 工房親 (東京)

2015  "CORRESPONDENCE LANDSCAPE"  工房親 (東京)                他展示多数




和田みつひと WADA Mitsuhito



「水を想う、水が想う」(1)(2) 2020  発色現像方式印画
画像サイズ 39cm×58.5cm  シート 大全紙:50.8cm×61cm 額(外寸):70.8cm×89.7cm


●作品コメント「水想う、水が想う」

1997年より、光と色のインスタレーション作品を制作している。制作の主題は、「見ること」と「見られること」との関係の考察だ。「見 ること」と「見られること」との「積極的な一体化」の場を創出する試みである。 そして、死に直面するという個人的な体験が、死生という主題となって近年加わり、より強く制作の動機となっている。

2018年より、「円環する時空」というコンセプトで、インスタレーション 作品を制作し、その構成要素とし

て、物質であり虚構を映し出 す「鏡」、物体であり空間を孕む「花の絵画」、虚構である「ループ映像」 などの挿入を試み、死生の隠喩として機能させている。同時に、同様のコンセプトで、写真作品の制作を始めている。「円環する時空」と は、今を生きる現在を過去から直線的に堆積した時空でなく、死生、虚実を内に抱え持ち、過去と未来をも同時に合わせ持つ円環的な時空 のことだ。インスタレーション作品と写真作品、また、それらを融合させることによって、人と世界が未分化な状態、いわば、言語と身体 を獲得する以前(生前)、もしくは言語と身体を喪失した以後(死後 の状態を表現したいと考えている。

死生という主題から生まれた「円環する時空」というコンセプトの具現化にあたり、光と色による抽象的な場を設定して、他者である鑑賞 者に「気づき」を喚起するインスタレーション作品から、光を手掛かりに作家個人の「気づき」によって抽象化を図り制作する写真作品へ と制作の重きが移行した。写真撮影では、眼前に広がる世界に反応すると同時に、自身の意識の揺れや変化に触れることになる。また、人 間の存在と意識をより深く考察し表現することが出来るようになると考えている。そして、写真によって切り取ら れた日常の断片を、死生、虚実、時間の隠喩として機能するよう、組写真もしくはスライド映像に仕立て提示する方法を選択するに至っている。


■本展覧会テーマ「水を描く」に対するコメント(5月頃)

 新たな風景との出会いであるにも関わらず、その眼前の光景と出くわした驚きと同時に、どこか懐かしさを伴う体験をするこがあります。この体験に深く意識を沈めて考えてみます。今を生きる現在を、直線的に捉えれば、過去から堆積した時空でしかありません。ですが、死生、虚実を内に抱え持ち、過去と未来をも「円環する時空」と捉えると、眼前に現れた気づきは未来からの反映かもしれません。日々の生活の中や旅先で、特に光と光の反射に着目して「海、川、ガラス窓、花などの植物」等の写真を撮影し、制作テーマである「円環する時間」、そして「現実と虚構」「死生」の隠喩として機能するよう作品を構成し制作しています。今回、「水を描く」という展覧会テーマを基に、新作を構成し発表したいと考えています。


<インタビュー>(8月頃)
●「水を描く」というテーマで展覧会へのお誘いをいたしましたが、初めに何を想いましたか? 

ここ数年、スライド画像での提示や、インスタレーション作品と組み合わせて写真映像を発表しています。光の存在を手がかりに撮影する際に、水面をモチーフにすることが少なくありません。今回、展覧会にお誘いいただき、「水を描く」というテーマを手がかりに、写真作品(紙焼き作品)のみで制作し発表する良い機会になると考えました。

●本テーマで取り組んだ新作について、どのように取り組まれましたか?

「水を描く」というテーマに則り、水面を撮影した写真を2枚選び組み合わせました。2枚の写真を組み合わせ展示することで、「水」を想う(見る)と同時に、「水」に想われる(見られる)、各々が相互関係にあり、主客が同一にある状態を表現したいと考えました。

●展示作品についてお聞かせください。また、新たに試みたことや特にこだわった部分があればお聞かせください。

これまで、スライド映像作品の発表を前提として制作していました。ミラーレスカメラで撮影し、撮影したデジタル画像を液晶画面で確認し、スライド映像に仕立てる制作は、いわばデジタル作業に完結した作業です。今回の作品は、ディスプレイ表示された発光する画像から、光が反射することで見える印画紙上への移行の作業です。モノとしての写真作品(紙焼き作品)として発表するということで、より写真の諧調表現に苦心しました。

●あなたにとって「絵画」とは何でしょうか。

大学時代は日本画を専攻し、卒業後「絵画とは?」という問題意識から始まった制作は、光と色のインスタレーション作品へと展開しました。そして、光そのものの効果によって生み出される写真映像の利用は、「見ること」と「見られること」との関係の考察という、これまでの制作の主題と通じるものがあると考えています。今回、写真作品の制作を、主体と客体の同一性、及び抽象性と純粋な感覚性への志向による試みと考えると、そもそもの制作テーマである「絵画を問う」という問題意識と連続していると考えています。「絵画を考える」ことは、制作における根源テーマと言ってもよいでしょう。そして、まさしく絵画は、「美術」であり、「美」を問う「術」なのでしょう。

●コロナ禍ではございますが、今後の活動の目標や挑戦したいこと、制作の姿勢などをお聞かせください。

コロナ禍の中、誰もが人と世界との関係、その在り方を考えざるを得ない状況に直面しています。このような状況下で何が出来て、何を為せるのか、何を為したいのかを丁寧に考察と試行を繰り返し、制作を深化させたいと考えています。

インスタレーション作品と写真作品、各々の表現を深めると同時に、それらを融合させることによって、新たな作品を提示していきたいと考えています。


略歴

主な個展

2019 「何時でもない/何時でもある」gallery SIACCA (東京)

2018 「何処でもない/何処でもある 地上の空間」Gallery Hasu no hana (東京)

2017 「残像の部屋」 ギャラリー現 (東京)

2013 「残像の花」Gallery Cocon 古今 (東京)

2009 「Behind Blue Light Yokohama」BankART Studio NYK、本町実験ギャラリー、BankART かもめ荘、BankART 桜荘 (神奈川)

2007 「ピンク× グリーン」プロジェクト/上野の森美術館ギャラリー (東京)

2005 「replace it for the life」or'est( ベルリン)

2004 「green/green」慶應義塾大学日吉キャンパス来往舎ギャラリー (神奈川)

2001 「〈光のかたち〉公園灯プロジェクト」アートリンク上野‐谷中2001、上野恩賜公園 (東京)


主なグループ展

2019 『ヒカリアレト2』旧石井県令邸 (盛岡)

2010 『 あいちアートの森 知覚の扉Ⅱ』喜楽亭 (愛知)

2010 『 「知覚の扉』豊田市美術館 (愛知)

2009 『 BankART 妻有 桐山の家』BankART 妻有 (新潟)

2006 『 DZUGUUUN』Galeria H.arta (ティミショアラ)

2005 『 Black Light Gallery』U3 Banhof & Tunnel,Potsdamer Platz (ベルリン)

    『 BankART Life 24 時間のホスピタリティー ~展覧会場で泊まれるか?~』BankART Studio NYK (神奈川)

2004 『 「カフェ・イン・水戸2004』水戸芸術館現代美術センター (茨城)

2000 『 空間体験 :[ 国立国際美術館 ] への 6 人のオマージュ』国立国際美術館 (大阪)

    『 プラスチックの時代|美術とデザイン』埼玉県立近代美術館 (埼玉)



展覧会概要


「絵画を考える -水を描く- 」


(展示作家)

一条美由紀、大渕花波、鈴木敦子、中西寿美江、中村索、野津晋也、和田みつひと


会期 2020年9月5日(土) - 9月20日(日)

※オープニングは開催いたしません。
新型コロナ感染拡大状況に応じて開催日時や営業方法が変更となる場合もございます。
ご来廊時にはマスク着用の上、手指消毒をお願いいたします。
最新情報はwebsite、または、email宛てにお問い合わせ下さい。


開廊 水 - 日   12:00 - 19:00  (日曜は18時まで。展示最終日は17:00まで。)

休廊 月・火


住所 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿 2-21-3

交通

地下鉄日比谷線「広尾駅」2番出口 徒歩6分

JR山手線「恵比寿駅」西口 徒歩15分 

渋谷より都バス06 新橋行・赤羽橋行「広尾5丁目」下車 徒歩3分 


2020年9月 オンラインショップ始めました。(こちら)

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